第55回 グリンカ:アリャービエフの歌曲『うぐいす』の主題による変奏曲
4月になりますね。清々しい気持ちで新生活を過ごされていますか? 春うららかなこの季節、自然に囲まれた私の教室の外からは、小鳥たちの美しい鳴き声が聞こえてきます。
今月ご紹介する曲はグリンカ(1804~1857/ロシア)の「アリャービエフの歌曲『うぐいす』の主題による変奏曲」です。うぐいすといえば、「ホーホケキョ!」と鳴きますよね? しかし実はこの曲のうぐいすは「ナイチンゲール」のことなんです。歌曲の中では『どこへ飛んでいっても私ほど不幸な娘はいない』と表現されるほどに、"音楽的"で、かつ"憂鬱な嘆きの歌"をうたう鳥と言われています。
曲自体は、ロシアの哀愁たっぷりの旋律にもとづいた短調の主題から始まり、第4変奏まであります。時折ナイチンゲールの鳴き声を入れた、非常に美しいアレンジになっています。原曲は恋の歌ですので、例えば私はこんなイメージをしてみました。
まずテーマですが、印象的なフォルテのアルペジオで始まる冒頭部分は「深い緑の森の中、娘の悲恋の泣き声で物語が始まる」、続くAndante部分は「娘の語り」です。ソプラノとバスのアンサンブルをよく聴きながら演奏すると良いですね。Piu mossoになったら少し軽く「妖精に姿を変えた娘」をイメージしてみましょう。
悲恋の歌は、第1変奏、第2変奏と音価が細かくなり音域を広げながら繰り返し続きます。第3変奏では長調になり、「しばし希望が見えた時」でしょうか? それとも「幸せだった頃の回想シーン」? 第4変奏は数ページにもわたる大規模な構成になっていますが、最後のVivaceまで推進力を持って弾きましょう。途中に出てくるbrillanteは一瞬きらめくナイチンゲールの鳴き声、明るい声の中に悲しみをたたえる見せ場です。キラキラした音色を降り注いで下さい。最後は「絶望した娘の死」を思わせます。
こんな風に場面場面でオリジナルの物語を作ってみて下さいね。ちなみに私の考えたイメージで演奏したところ、「激しいナイチンゲールですね」と言われました(笑)。どうぞ皆さん、「繊細な」ナイチンゲールのお話など作ってみては?