第46回 マイカパル『子守歌』
雨に濡れた紫陽花の風情ある姿が楽しめる季節になりました。今月は、マイカパルの「ピアノ小品集」から「子守歌」のご紹介です。
私がマイカパル(1868~1938)というロシアの作曲家を知ったのは、7年ほど前に楽器店のセミナーに参加して、この小品集を手にした事がきっかけでした。どの曲もとても美しく魅力的で、家に帰ってすぐに最初から最後まで全曲弾いて楽しんだ事を、今でもはっきりと覚えています。弱音の練習をするのに適した曲が多く、気を抜くと1音だけ音が大きくなって飛び出て聴こえたり、弱すぎると鳴らなかったり。pで始まる曲は最初の音をいかに繊細に感じて弾くか、集中力と指先の力が養われたように思います。
この曲集にpから始まる曲が多いのは、最初から自然に弱音の響きに敏感になるようにとの配慮からだそうです。解説者の村手静子さんの言葉にもありますように、「よく響く透明なピアニッシモ」「なめらかなレガート」「繊細なペダリング」、この三つはピアノを学ぶ者にとって永遠の課題でしょう。これらの演奏技術を子供のころから徹底して教えるのがロシアのピアノ教育の特徴で、マイカパルはそういったピアニズムを養う優れた小品を数多く作曲し、日本でも注目され高く評価されています。
子守歌もとても綺麗な曲です。この曲を美しく弾こうとすると、自然にレガートが身につきますし、弱音の響きにも敏感になります。また、8分の6拍子のリズムの勉強にもなる曲です。ゆりかごに揺られるように手首を少し上下させて弾くようにとアドバイスがついています。ペダルの使い方も効果的で、マイカパル自身のペダル指示がつけられている事も興味深いところです。
初歩の段階から手に優しく、音楽性豊かな曲のレパートリーを増やしたいものです。子守歌は、子供さんだけでなく大人の方にも弾いて頂きたい1曲です。
雨の日はゆったりとピアノに向かう時間を楽しんでみませんか?