第40回 グリーグ『抒情小曲集』
オリンピック東京招致が決定し、益々、元気が出てきた日本。2014年に向けて贈る曲のテーマは「幸福と前進」。グリーグ作曲抒情小曲集「トロルドハウゲンの婚礼の日」です。
グリーグ(1843~1907)といえば、彼の名を不屈のものにしたピアノコンチェルトイ短調です。ティンパニのイ短調の主音をクレッシェンドで奏するあの印象的なフレーズで、とてもパワーみなぎる曲です。彼は、このコンチェルトやイプセンの劇「ペール・ギュント」を作曲する事で忙しくしていた頃に〈抒情小曲集〉をトータル37年(1867~1901)の長い年月をかけて完成させました。
この曲集は10集に分けられていて計66曲からなります。37年もの長きに渡り書き続けられた為、心情の変化や創作上の新しい試みが伺えます。シューベルトの「楽興の時」、メンデルスゾーンの「無言歌集」、ショパンの「ポロネーズ」や「マズルカ」、チャイコフスキーの「四季」と同様、自国愛、自国の自然への賛美、民族音楽との関わりが大きいのは否めないと思います。
ピアノは弾いている本人が楽しく弾ける事、これが一番。「トロルドハウゲンの婚礼の日」は、一回耳にしたら二度聴きたくなり、更に弾きたくなる。弾くと終われないくらい、楽しいリズムと音の流れが印象深い曲。
空5度の音型が基本のリズムを刻むところから始まり、まるで幸せな二人が腕を組みイソイソと歩いてくるイメージ。次の3連符は開放的で上機嫌な雰囲気を醸し出しています。31小節からの左右交互で織り成すメロディは沈黙からの開放感。45小節からの4小節はクライマックス。まるで大輪の花火の連発の饗宴の様な感じで弾きたい。次に、全く違う優しく甘い空気が美しく囁きます。
再現部は躍動感みなぎり、余韻を惜しみながら終わると思いきや、最後の二長調の主和音の大爆発。予想外でズッコケます。夫妻の銀婚記念に再使用されたこの曲。幸福に満ち溢れ、「音楽は生き物」とアピールしてくる。年頭の景気づけに如何でしょう。