ピティナ調査・研究

第37回 タピオ・トゥオメラ『犬の夢』

今月、この曲
タピオ・トゥオメラ『犬の夢』

ミュージックトレード社『Musician』2013年10月号 掲載コラム

楽譜画像

皆さんはペットを飼っていらっしゃいますか? 時々行く大型スーパーの入口近くにペットショップがあって、生まれて2か月前後のワンちゃんたちがガラス越しに見えるようになっています。その横を通るとあまりの可愛らしさに素通りできず、つい時間を忘れて見入ってしまいます。時間帯のせいかぐっすり眠っている子も多いのですが、中には眠っている子を踏んづけながら、自分と同じぐらいの大きさのぬいぐるみと格闘している子もいて、どちらがぬいぐるみ? と思わず噴き出したりして......。

9月20日~26日は動物愛護週間、様々な行事が全国各地で実施されるようです。動物は多くの幸せを与えてくれるかけがえのない存在だということを改めて認識する機会ですね。

そこで今月の曲は「犬の夢」。ピアノ教本「スオミ・ピアノ・スクール」に収録されている曲で、1958年生まれのフィンランドの作曲家、タピオ・トゥオメラがこの教本のために書き下ろした現代音楽です。

楽譜の上には、曲中に出てくるグリッサンドやクラスター、音の順やリズムを自由に即興的に弾くところ、倍音を出すために鍵盤を押さえる記号など、新しい記譜法の説明が書かれています。

曲は小さな6つの部分からできているのですが、それぞれがテンポもリズムも音域も全く違っており、イメージが湧き上がってくるユニークなものになっています。例えばだんだん深い眠りに落ちて夢の世界へ入っていくような感じ、激しく吠えている様子、夜空に瞬く星、駆け回っている、あるいは転がり落ちていく? ところなど。そして面白いのはその6つをどのような順で弾いても自由なのです。さいころで決めてもいいし、ストーリーを考えてから順番を決めるのもいいでしょう。

ブルグミュラーを弾くぐらいの生徒さんで充分に弾けますが、自分のイマジネーションで、強弱や音色、アゴーギクなど幅広い表現ができ、発表会などで弾くと、なかなか高度でカッコいい曲に聴こえますよ。

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