第35回 ルロイ・アンダーソン『そりすべり』
夏の暑さも、いよいよ本格的になってきました。先月に引き続き、今月もアメリカ人作曲家の作品より、爽快感とスピード感あふれる作品をご紹介しましょう。
ルロイ・アンダーソン(1908年~1975年)の作品は、どれもお洒落で親しみやすいセミクラシックです。曲目は知らなくても、きっとお耳にされたことのある曲ばかりだと思います。ワクワクする弾みのあるテンポ感や夢のような美しいサウンドに、心揺さぶられた方も多いのではないでしょうか。元々、アンダーソンの作品のほとんどは、ボストン・ポップスオーケストラによって演奏されたもの。それをピアノで演奏する場合は、オケのダイナミックさを味わうためにも「連弾」がお薦めです。
原曲に倣って、擬音部分を打楽器で再現しながらピアノ連弾するという愉快なアイデアを盛り込み、発表会で「そりすべり」を披露した生徒がおり、大好評でした。その楽しい演奏に、聴衆は自然に笑みがこぼれました。アンダーソンの世界には、老若男女問わず、人の心を明るくしてくれる魅力があります。
「そりすべり」は冬の曲と決めつけず、あえて真夏に弾くのも良いものです。涼しくしたお部屋で、気の合うお仲間・ご家族と、アメリカの古き良き時代に想いを馳せながらお楽しみください。
私は、アメリカのテレビ番組「奥さまは魔女」を見ては、目をハートにして心躍らせた世代。ドラマに出てくる調度品や便利そうな家電に憧れ、さらにはバックに流れるコミカルで生き生きとした音楽に感動した子供でした。同じように、欧米の夢のような暮らしぶりや小粋な音楽に魅せられた方は、きっと大勢いらっしゃいますね。
アンダーソンの作品はもちろん、無声映画の画像に合わせて即興的に音楽を奏でたシアターオルガン音楽など、20世紀半ばのアメリカの音楽には、人の心を豊かにしてくれる共通の優しさが溢れています。
厳しい暑さが続きますが、アンダーソンのHappyな曲で、どうぞ元気に乗り切って下さいね。素敵な夏になりますように。