第34回 ギロック『小川で水あそび』
季節は巡り、暑い夏に突入です。今回の「今月 この曲」は、こんな季節にぴったりの、清涼感あるピアノの小曲を選んでみました。
私は神戸に越して来て27年になります。神戸の街は海と山に囲まれており、その間を繋ぐ幾つかの川辺では、春から夏にかけて、子供達や動物までもが水あそびをしている姿を目にすることがありました。この曲を聴いていると、その時の子供達の楽しそうな様子や歓声が浮かんでくるようです。お稽古を始めたばかりのお子さんから、久しぶりにピアノの蓋を開けてみようかしら......と思い立ったお母様、お父様にもお勧めの涼しげな曲です。
作曲者ウィリアム・ギロック(1917~1993)はアメリカ人で、初心者から中級程度のピアノ愛好家向けの作品を数多く世に送っています。シンプルで美しいメロディーながら、いろいろな音楽の要素が組み込まれていて、子供から大人まで楽しめる作風。さり気なく反復されるリズムや、使いやすい指の運びに、ギロックの愛情深さが感じられます。季節や行事、日常生活など身近なものが題材になっているところも魅力です。
この「小川で水あそび」は、水あそびが大好きな子供達が喜びそうな、水しぶきが飛び散るような楽しい曲です。技術的には1 - 3 - 5の指がしっかりしてきたら弾けます。しかも2の指(中指)が黒鍵を弾くという、弾きやすい配慮ある調で書かれています。ペダルを踏むところもあって、弾いていて気持ちいいのです。初歩の子供達が誇らしげにペダルを使って演奏する姿は微笑ましいもの。なんてピアニスティックなのでしょう!
終盤にフラット1つでちょっぴりせつなくなった後は、最後の2小節で華やかに締めくくります。わずか20小節の曲の中にもドラマのような展開がある素敵な曲。聴き映えもしますので、発表会などの選曲にもお勧めの1曲です。
ピアノで水あそび。みなさん、是非楽しんでみて下さい。