ピティナ調査・研究

第28回 ショパン『コントルダンス 変ト長調』

今月、この曲
ショパン『コントルダンス 変ト長調』

ミュージックトレード社『Musician』2012年12月号 掲載コラム

楽譜画像

「コントルダンス」は、イギリスに起源を持つ2拍子系の軽快な舞曲で、英語では「カントリーダンス」と言います。男女が対になり、フレーズ毎に相手を変えて同じ踊りを繰り返す感じ、今で言えば、運動会の時に踊ったフォークダンスみたいなものでしょうか?

この曲は1827年、ショパンが18歳の頃の作品だと言われています。この頃、ワルシャワ音楽院で本格的に作曲を学び始めたショパンは、様々なスタイルの小品を作り、この曲もその中の1つだと思われます。ショパンが作曲したコントルダンスは、この1曲だけで、とても短い作品ですが、一度聴くと忘れられないほのぼのとした味わいがあります。

8分の6拍子の穏やかな付点のリズムを持つしなやかなメロディの変ト長調の部分と、変ハ長調の柔らかな左右の旋律が絡み合う短いトリオを持つ3部形式の曲です。アーフタクトのメロディー、そして和声はとてもシンプルな仕組みになっていて、「コントルダンス」というタイトルのイメージ通り、素朴な田舎の踊りという雰囲気が漂っています。

僕がこの曲の一番好きな部分は、なんといっても変ハ長調の8小節です。下属調に転調したメロディーは途端にナイーブなラインを描きます。7度9度など広い音程をしなやかに縫うように描いていくメロディラインはどこかせつなさを感じます。そしてまた、何事もなかったように、元のメロディに戻り、コーダもなくす~っと儚く終わる流れです。

勿論最後の8小節はコーダのイメージを持って演奏しても良いかもしれませんが、逆にあっけなくふっと突然終わってしまうように演奏するのも効果的かもしれません。

フラットが多く、最初は譜読みにてこずるかもしれませんが、弾き慣れてしまうと技術的には難しい部分はないので、きっと素敵なレパートリーに加えられると思います。