第25回 サン=サーンス『動物の謝肉祭』
「○○ちゃん、この曲にお話しを付けてきてね」と、ソナチネを弾いている小学生には、イメージ創りの宿題をよくさせます。時には大人では想像もつかないような話にまで発展させ、感性の中で調性や和声の変化を自然に読み取り、楽譜にマッチしているのには、驚き感動します。そんなイメージ力を養うアンサンブルの教材として発表会で登場するのが、このピアノ絵本館シリーズです。楽しそうな差し絵の入ったお話付きで、本来なら大きな舞台でオーケストラをバックに繰り広げられる壮大な芸術作品の名曲たちが、そのストーリーと共に全てピアノ連弾で演奏できるようになっています。
そのシリーズの中の一つが、サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭」です。全14曲から成る組曲で、初心者から大人まで工夫次第で色んな形で楽しめます。私は、今まで発表会の中でこの曲を数回取り上げてきましたが、今年のピティナピアノステップでは、2台のピアノを使用し、オリジナルに近い小編成のオーケストラと共演......と、どんどん夢が膨らみバージョンアップしています。
「動物の謝肉祭」はそれぞれの動物が持つキャラクターや動きが、そのまま音楽になっているので、子供たちはまるで自分が動物園の主人公になったような気分で、それらを表現するテクニックも自然に身に付けることができます。また、サン=サーンスのユーモアや皮肉に、大人もニンマリすることも......。
例えば、運動会でよく聞くオッフェンバックの『天国と地獄』の旋律を、わざとゆっくり奏する「亀」。この曲の前に原曲を弦合奏で挿入し、子供達には「あ、運動会の曲がこんな風に変身するのか!?」と知ってもらいます。
また、「森の奥のカッコウ」は、3拍子の弦楽器に包まれるような森の風景の伴奏に乗り、ただただ不気味に「カッコウ」と繰り返すのみですが、始めは2拍目で鳴いていたのが、1拍目であったり3拍目であったり、リズム練習にもなります。ピアノを習い始めた4歳のあの子に受け持ってもらおうかな? と、生徒達の顔を思い浮かべそれぞれの子に合う曲を選ぶのも楽しみなのです。