第21回 カッチーニ『アヴェマリア』
大地の恵み、鳥のさえずり、森の息吹、野に咲く花......。春の訪れと共に、自然界の恵みを最も感じさせる5月はカトリック教会では『聖母月』としています。主の復活の喜びと希望に満ちたマリア様に祈りを捧げるのが伝統とされているようです。
今月の曲はカッチーニの「アヴェマリア」、癒しの曲。ピアノのみで弾いてもOKですが、弾き語りにもトライしてみましょう。今やシューベルトやグノーのアヴェマリアと共に、コンサートには必ずと言って良いほどリクエストされる大人気の曲でもあります。
歌詞は"Ave Maria"のみをはじめから終わりまで繰り返します。コードも8小節を2回、何度となく繰り返されますので、16小節がわかればすぐに弾ける、歌えるので、弾き語り初心者にはお勧めの曲です。1フレーズと2フレーズを対比させましょう。1回目と2回目はメロディに少しのバリエーションがかかっていますので、美しい2つの対比を楽しんで演奏しましょう。
祈り、ロマンティック、哀愁に満ち、暗く深い悲しみ、ドラマティック、恐怖、嘆き、慈愛、希望、天上界の楽園、癒し、と様々に聴こえます。こんなにシンプルなのにちっとも飽きない、人によって捉え方がこんなにも違う不思議な魅力に溢れた曲です。
3.11の追悼コンサートにもこの曲を演奏しました。自然と涙する名曲です。この曲は実際には、ジュリオ・カッチーニ(バロック時代)の作品ではなくウラディミール・ヴァヴィロフ(Vladimir Vavilov 1925-73ソ連)によって1970年頃に作曲された歌曲と言われています。録音も楽譜も90年代半ばまでは知られていませんでした。バロック期の著名な作曲家の名前を借りて売り出すことがしばしばあったようです。
コード進行さえわかれば、アレンジして自由に弾かれるのもまた楽しいものです。あなたも弾き語りデビューしてみませんか?