第16回 リチャード・ロジャース『私のお気に入り』
薔薇の花びらの雫、子猫のひげ、
銅製のケトル、暖かいウールのミトン、
紐で結ばれた茶色の紙包み......
ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中で、雷を怖がる子ども達に家庭教師のマリアが歌う「私のお気に入り」(リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞)。
シンプルなコード進行に、一度聴いたら口ずさみたくなるノリのよいメロディー。ジャズのスタンダードナンバーとして、またCMソングとしても耳馴染みのある一曲です。
何度でも観たくなる映画が、どなたにもあるかと思いますが、私にとっては、幼心に受けた数々の衝撃的な感動が、回数を重ねても尚、ますます色鮮やかに甦る一本。
壮大なアルプスの山々、ジュリー・アンドリュースの伸びやかな歌声、子どもながらに感じた歴史的背景や戦争の足音、憧れの欧米の暮らしぶり......。ワクワクドキドキの連続の中、字幕を見ながらの「私のお気に入り」は、まさにスペシャルなmy favorite songとなったのでした。
映画の中で、マリアは子ども達の恐怖心を和らげようと、思いつくままにお気に入りを次々と歌にのせています。日常の中に、小さな喜びを見出せることが、なんて素晴らしく、大きな幸福につながることでしょう!!
12月と言えばクリスマス! ウキウキ気分で大人も子どももサンタさんに何をおねだりしようか思いを巡らすのも、もちろん素敵。けれど今一度、心静かにご自身のすぐ近くにある本当に大切なものを見つめ直すのもまた、人生を何十倍も輝かせる心豊かな生き方ではありませんか。
歴史に残る2011年も、いよいよ幕を閉じようとしています。誰にとっても忘れてはならない3.11。今なお大変な生活をされている多くの皆様も、どうぞ心の中に灯を見出され、新しい年を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます。