ピティナ調査・研究

第15回 ギロック『秋のスケッチ』

今月、この曲
ギロック『秋のスケッチ』

ミュージックトレード社『Musician』2011年11月号 掲載コラムコラム


今年の夏は特に暑く、寝苦しい夜も続き、涼しい秋を心待ちにされていた方も多いのではないでしょうか。さて、"秋"といえば、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋......等々、この実り多き素晴らしい季節を、世界中の人々が謳歌いたします。

学校では文化祭や遠足、音楽の世界でも数々のコンクールが催され、多忙な毎日を送られている方も少なくないはず。そんな慌ただしい日々、ふと外を見ると空には秋の雲。山々は美しく化粧し、黄金色のポプラ並木や落葉たちのグラデーション......、なんて美しくロマンチックなのでしょう!

今月は、そんな素敵な"秋"にピッタリなセンチメンタルソングを選曲いたしました。ご存知ウィリアム・L・ギロック作曲『秋のスケッチ』(叙情小曲集より)。ピアノ教師であり"音楽教育界のシューベルト"と称えられたギロック、41歳の時に作曲された彼の代表作です。少ない音数の中に、なんとも奥深いハーモニーが広がり、色彩豊かに叙情的な音色が自然の織物のように紡がれていきます。

♩=about 44-50 という速度表示があるように、この曲の魅力の一つとして「どんな速度で弾いてもそれなりの味わいが表現される」ことが掲げられるでしょう。例えば発表会では、練習嫌いな中高生、速い動きの苦手なアダルトビギナーにピッタリ。その人なりの味(個性)が、十人十色の魅力として奏でられるのです。
ちなみにギロック氏は、ご自身の曲の演奏会をとても楽しみにされていたそうです。演奏者によってどんな風に料理されるか、そして新しい味付けの発見に、大変喜ばれたとのこと。

あなたの『秋のスケッチ』、パレットにどんな色を用意しますか? 貴方なりのカラーで、大好きな秋の景色をスケッチしてみて下さい。天国のギロックさんが、きっと優しい笑顔で微笑んで下さることでしょう。

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