ピティナ調査・研究

第11回 ニーノ・ロータ『戯れるイッポーリト』

今月、この曲
ニーノ・ロータ『戯れるイッポーリト』(全音楽譜出版社)

ミュージックトレード社『Musician』2011年7月号 掲載コラム

楽譜画像

私の家のベランダから小学校へ続く歩道橋が眺められます。映画「Shall we ダンス?」のロケでも使われた、それは立派な歩道橋なんです。朝夕、そこを通る子ども達の姿を見、声を聞くと心がなごみます。もうすっかり成人してしまった我が家の3人の子ども達の姿も小さい頃のままで、ふとそこに混じっているような気がします。子ども達が元気なのを見るとうれしくなるのは、きっとそこに明るい未来を感じるからなのでしょうね。

「戯れるイッポーリト」。作曲者は今年生誕100年のニーノ・ロータ。映画音楽であまりにも有名な方ですが、クラシック作品も多く、本職はクラシックの作曲家だとご本人は言われていたとか。イッポーリトとはイタリアの男の子の名前。彼もとびきり元気です。私のレッスン室にやってきた歴代のやんちゃピアニスト軍団のことを思い出してぐったりするほどです。でも、うれしくなります。やっぱり子どもはこうでなくちゃ。我がピアニスト軍団もスポーツマン揃いでしたが、イッポーリトも運動神経は抜群、それはこの曲の中での活躍ぶりを見ればわかります。どんな活躍って?、例えば......公園の遊具をステージにしたサーカスごっこ!

始まりの高らかなラッパの音で見栄をきったかと思うと、くるくるっと鉄棒での連続技、お次は少し慎重に塀の上での綱渡り、おや、またラッパの音です、チャンス、ブランコが空いている! さあ、高くこいではジャンプ! の空中技。そしてすべり台でひとすべり、したかと思うとあっという間にかけていって見えなくなっちゃった。あれ、木のかげからこちらを覗いてあっかんべ、だって......。

めまぐるしく、はじけて1分半。コンサートのオープニングなどにいかがでしょう。このあっけらかんとした楽しさ、賑やかさ、愛すべきアレグロです。

ボールを追いかけるのが忙しくて慢性練習不足、なのに私には真似のできない骨太の音を出しては悔しがらせてくれた、こちらも愛すべきやんちゃピアニスト達、もうすっかりたくましくなっているでしょうね。未来はあなた達にお任せです。

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