ピティナ調査・研究

第9回 ジョン・ジョージ『ソフトシュー ダンス』

今月、この曲
ジョン・ジョージ『ソフトシュー ダンス』(株式会社全音楽譜出版社)

ミュージックトレード社『Musician』2011年5月号 掲載コラム

楽譜画像

ふとした事から知り合った同郷の陶人形作家、須永みいしゃさんの個展に行ってきました。東京谷中の一画にある『ギャラリー猫町』。高い石段の上り口でこのギャラリーの象徴とも言える猫の置物が出迎えてくれました。閑静な住宅街にあるこの猫を見たとき、この一画だけが別世界のような感覚にとらわれました。この猫町という名の由来をお尋ねしなかったことが心残りです......。

ギャラリーの中は、愛らしい手のひらサイズの猫たちの世界でした。個展のテーマである「ネコ絵日記」に登場する様々な猫。きめ細やかな観察から生まれたのでしょう。臨場感あふれる作品の数々でした。

私が気に入ったのはリュックを背負ってハイキングにでも行くのかな? と思えるものでした。その作品を見ているとジョン・ジョージの「ソフトシュー ダンス」が思い浮かびました。あの軽やかなリズム、つい声に出して口ずさみたくなるようなメロディー。不思議なことにそれぞれの猫を見ていると背景が想像されてきます。そして、いつのまにかメルヘンの世界へと導かれていくのです。

1930年代にアメリカで流行したソフトシューダンス。金具のついていない靴でタップダンスのようなステップを踏むダンスのようです。8分の6拍子のなめらかな流れの中、20世紀の品の良いユーモアを感じる軽快なソフトシューダンスの曲に合わせて、この猫たちがカラフルなシューズを履き、心地よさそうにステップを踏んでいるような気がしてきたのです。それに気づいたときはとても愉快でした。

私にとって陶人形の個展鑑賞は初めての経験でした。音楽と同じ芸術であり、背景を想像することが重要で、音楽とリンクする部分が多くあることを知る機会となりました。それは他のジャンルと音楽をリンクさせながら鑑賞する新しい楽しみ方の発見でした。皆さまも経験あれ。

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