ピティナ調査・研究

第72回 チュニジアの夜

今月、この曲
チュニジアの夜

ミュージックトレード社『Musician』2016年9月号 掲載コラム

楽譜画像

今回ご紹介するのは『チュニジアの夜』です。この曲は、1944年にピアニストのフランク・パパレルと、ビバップの開祖の一人であるトランぺッターのディジー・ガレスピーが作った楽曲で、この時代、モダンジャズのスタンダードナンバーとしても有名な1曲。中南米原産のアフロ・キューバン・リズムと、4ビートのリズムの組み合わせによる独特の雰囲気を持つエキゾチックなこの曲は、聴く人にとても強烈な印象を残します。

もともと太鼓などの打楽器の「リズム」と「うた」が大きな特徴であったアフリカ音楽が、アメリカ大陸に渡ったアフリカ黒人により北アメリカでは歌だけが伝わり、、中南米ではリズムと歌の双方が伝わったという違いが見られ、それにより、中南米の音楽であるルンバやサンバはアフリカの音楽性が強く伝わったのに対し、アメリカ音楽の黒人霊歌(ニグロ・スピリチュアル)やブルース、JAZZは打楽器的なものが最も排除された形の音楽として継承されてきました。

ところが1930年代には、次第にアメリカでも太鼓もドラムもセットという形で使用されるようになり、ラテンリズムの魅力が注目されるようになってきました。1940年代、さきほど紹介したディジー・ガレスピーにより「アフロ・キューバン・リズム」がアメリカのジャズとして確立されていきました。その代表的な曲が『チュニジアの夜』。

この曲の出だしは、ドラムハイハットの連打とラテン風のベースラインから始まり、次にピアノのテーマが始まりますが、その独特なシンコペーションを奏でるのが、またこの曲の魅力の1つです。1つの曲の中に、アフロ・キューバン・リズムと4ビートの2つのリズムが混在していることも、この曲の面白いところでもあり、演奏するうえでも、身体でリズムを感じずにはいられない部分でもあります。数あるジャズ曲の中でも、一度は弾いてみてほしい1曲です。

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