ピティナ調査・研究

第69回 キャロリン・ミラー『ほたる』

今月、この曲
キャロリン・ミラー『ほたる』

ミュージックトレード社『Musician』2016年6月号 掲載コラム

楽譜画像

爽やかな新緑の季節、皆様如何お過ごしでしょうか。時おり吹く風に、間もなく訪れる夏の匂いが混じり始めました。お祭りに花火、子供たちの夏休み、開放的で華やかな夏。日差しが日毎に強くなるとともに、ウキウキと心踊ります。そんな夏の始め、静かな田舎の川辺や山中で舞うホタルの光景も、なんとも美しく儚く、短い夏を重ねてしまうのか、感慨深いものがあります。

さて、私のピアノ教室でも、普段できないちょっと難しい曲や憧れていた曲など、夏に向けてヤル気が湧いて来るのもこの時期。また逆に、ゴールデンウィークも終わり、間もなく梅雨時、ヤル気どころか倦怠感で一杯になる場合もこの時期。

そんな時、カンフル剤になる様な一曲を生徒たちに提案して、ワクワクした夏を迎えたいものです。そこで指導者を悩ますのは選曲。実力ある子の選曲は問題なくできることが多いのですが、悩むのは初心者の選曲ですね。更に、近年は曲を知らない子も増え、憧れている曲もなく、弾いてみたい曲もなく、でも何か素敵な曲や難しそうな曲を弾いてみたい。いませんか? こんな無茶な願いを持っている可愛い生徒。頑張りたい気持ちを応援して、何か聴き映えのする一曲を選んであげたいものです。

今回は、そんな初心者の子供や大人の方に、ちょっと憂いがあって大人びた、そしてちょっとカッコいい、しかも覚えやすく、また、テクニックの向上にもなる曲の中から、キャロリン・ミラー作曲の「ほたる」という曲を選んでみました。

シンプルな構成でできていますので、わかりやすく、色彩もハッキリしており、ペダルを使って魅力的に表現しやすく、また、使う音域が広くて鍵盤を沢山使いますので、聴き映えする点においてもピアノを弾く楽しさにおいても、とても満足して貰える曲だと思います。キャロリン・ミラーはアメリカの作曲家ですが、どこか日本の香りがするこの「ほたる」。発表会などで弾いても、初心者の中ではちょっぴり異色で目立つことでしょう。

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