第62回 ウィリアム・ギロック『ダウンタウン・ビート』
今回はウィリアム・ギロックの「ダウンタウン・ビート」をご紹介します。ピティナ・ピアノステップの課題曲にも選ばれているので演奏された方もいらっしゃると思います。皆さんはジャズという言葉からどの様なイメージを持たれますか? ギロックがこの楽譜に「はじめに」として寄せている文をご紹介します。
〈ジャズはアメリカが20世紀に発展させた偉大な音楽への贈り物の一つです。──生徒を音楽的に教育するにはジャズも含めて、バラエティに富んだポピュラーなスタイルの曲を日常のレッスンに取り入れるべきであり、又生徒が望めば楽譜から離れて即興演奏を経験するのも良いでしょう〉
機会がありましたら是非全文をお読み下さい。
「ダウンダウン・ビート」は同じコード進行が繰り返され、c、es、f、g、gesの5つの音でシンプルながら、魅力的なテーマが6回続けられます。その後アドリブの様な8小節があり、またテーマが現れます。ジャズの気分を充分に味わう事ができ、満足感を得られるクールな曲です。
私の教室では、「はじめに」の文に倣い、レッスンの中で17小節?の部分を作曲したり、23、24小節をグリッサンドで演奏しています。生徒がメロディーをキーボードのブラス系の音で演奏し、私のピアノとディオを楽しむ事もあります。実際にギロックの下で学ばれた伊藤 仁美先生にお聞きしたところ、ギロックはp、pp、バランス等には、注意を促しましたが、楽譜に捕らわれず演奏者の感性に従って演奏する事が大切だと話されていたそうです。
曲頭にIntensely rhythmic(激しいリズムで)の指示がありますが、熟年の方の中にはスロウバラードで演奏される方もいらっしゃいます。テンポ感が違うと新しい魅力を感じます。
この曲集には、「ダウンタウン・ビート」や「ニューオリンズのたそがれ」をはじめ、15曲がそれぞれの趣を持って収められています。一人で、二人で、またはアンサンブルでこの1冊をお楽しみ下さい。