第61回 マヌエル・ポンセ『間奏曲第1番』
今の季節にお勧めの1曲をご紹介します。マヌエル・ポンセの「間奏曲第1番(primer intermezzo)」です。私はある講座でこの曲にめぐり会いました。全く知らない作曲家でしたが、直ぐに弾いてみたい想いにかられ、他の作品も知りたいと思いました。
マヌエル・ポンセ(1882~1948)はメキシコを代表する作曲家です。16歳で教会の正オルガニストになる等音楽の才能を表し、ニューヨークで作曲家、演奏家としてデビューします。1933年に帰国し後進の指導にあたりました。ポンセはギターの作品が有名ですが、ピアニストとしても活躍しピアノ作品も多く作曲しています。
この間奏曲もその中の1曲です。7小節の序章の後に哀しげなテーマが歌われます。テーマはある映画音楽を思い出させます。続いて中声部の味わい深いメロディー(marc.ilcannto)に引き継がれていきます。
テーマが16分音符で書かれていたのに対し中声部は4分音符、2分音符で書かれています。音域の違いやリズムの違いから場面の変化を感じます。その後、ギターのアルペジオの様なモティーフ(sciolto)が表れ自由で情熱的な場面が表現されます。dim sempre e rallで休符となり再びテーマが歌われます。最初のテーマはpでしたが、ここではppの指示に変わっています。
3ページの短い曲ですが、情緒的な部分と激しい部分を持つ、印象深い美しい曲です。私の教室では小学生から熟年の方まで人気があり、ステップ、おさらい会等で演奏しています。この曲集のなかには、他に「メキシコの子守唄」「マズルカ」「満月」等バロック、古典、ロマン、民族と多様なジャンルの作品が18曲収められています。編集をされている宮崎幸夫さん演奏のるCDが付いていますので参考になると思います。ピアニストがコンサートのアンコールピースとして演奏することも多いようです。
皆さんは、どの様なストーリーを、また、イメージを広げられるのでしょうか? 素敵な初老の紳士のほろ苦い思い出、朽ち果てた古城の記憶、或いは青年の旅立ち。是非この曲をお楽しみ下さい。