ショパン国際コンクール(21)ファイナリストの声
ファイナリスト決定から一夜明けた17日には、ポーランド大統領ご夫妻と、審査員・ファイナリストが謁見する式典が行われました(→参考)。ここでファイナリストの声を一部ご紹介します。
ー包容力ある深い音が魅力的なアムランさんですが、小さい頃からどのような音楽教育を受けていたのでしょうか?
ケベック州に20年間住んでいまして、小さい頃からルーマニア出身の先生に習っていました。基礎から上級レベルまで一貫して教えて頂きましたが、そのような先生はなかなかいないので幸運だったと思います。小さい頃はスケールなどのエクササイズをしたわけでなく(ハノンのみ)、音楽性と想像力を高めることを一番大切にして、練習している曲の中でエクササイズをしていました。それが音楽に生かされていると思います。
それはとても大事なことですね。ではアムランさんにとって、ショパンの精神とは何だと思いますか?
ショパンの音楽は、人に、人の心に直接語りかけてくる力を持っています。ショパンの音楽を弾いていると幸せな気分で満たされ、我を忘れて没頭してしまうほどです。人として経験できる最高の体験ができると思います。
あなたにとってショパンコンクールとは?
ファイナリストの皆さんはすでに活躍されていますが、ここでまた新しい人やチャンスとの出会いがあると思います。また最新IT技術をポジティブに取り入れているのも良いですね。自分としては結果がどうであれ、これまでのステージを振り返り、自分なりに検証できたこと、それこそがすでに大きな成果だと思っています。
この場にいられることが本当に光栄です。集中的にショパンに取り組んできましたが、何度弾いても全く飽きることはなく、さらに愛情が増しました。これからももっとショパンが弾きたいです!
ショパンの音楽は、何度弾いても毎回新しい発見があります。ショパンの言語はとても複雑かつユニークで、ピアノを弾かずに楽譜を見るだけでも、多くの気づきがあります。ショパンには、ただ一つの演奏や解釈はありません。10通り、20通りでもなく、宇宙の広さほどあります。「ベストなショパン演奏」はなく、それぞれ「異なるショパン演奏」がある。だからコンクールではなく、フェスティバルかフォーラムのように、世界中からピアニストが集まり、それぞれ違うショパンの捉え方や解釈を持ち寄り、発表しあう場だと感じています。一次予選、二次予選・・ではなく、すべてリサイタルだと考えて、プログラムのコンセプトを組みました。
今回はどのようなコンセプトでプログラムを組みましたか?三次予選について教えて下さい。
まず各作品のユニークネスを理解し、自分なりのコンセプトを築き上げます。三次予選は子守唄で始めました。この曲は別の惑星のような、別世界のような音楽です。そしてポーランドの心に寄り添う悲劇的なマズルカ、また即興曲Op.51はソナタOp.58と繋がっています。このソナタも悲劇的です。最後のワルツはショパンが生きていた時代を象徴するような音楽です。全ての曲が繋がり、またソナタの各楽章、マズルカの各曲も繋がっています。この繋がり、関連性がとても大事だと思っています。
作品からユニークネスを発見すること、そこからコンセプトを築くこと。演奏にもたしかに独自の視点が貫かれていて、とても興味深く聴かせて頂きました。ショパンコンクールに参加して、一夜にして人生が変わるという経験は?またショパン以外で共感している作曲家を教えて下さい。
もう変わりましたが、ショパンコンクールのステージに立ったこと、素晴らしいアーティストである審査員の方々に聴いて頂いたこと、それがすでに光栄なことだと思っています。この1年はショパンを集中的に弾いてきましたが、バッハ、アルヴォ・ペルト、ラフマニノフも自分の心情と近いですね。
写真上:「両親も兄(アンドレイ)*もピアニストで、僕自身も自然にピアニストになりました」というオソキンスさん。お兄さんも2012年度リーズ国際コンクールなどで聴かせて頂きました。性格の異なる二人ですが、世界観は壮大です。小さい頃は兄弟デュオもしていたのでしょうか、ぜひ聴いてみたいものですね。