ショパン国際コンクール決勝・2日目
ショパン国際コンクール決勝2日目。この日は3名がいずれも協奏曲1番を演奏した。日に日に熱を帯びる満席の会場は、この日最高の熱気に包まれた。
と同時にハプニングも発生!なんとコジャイノフ、アヴディエバの演奏中に舞台照明が一瞬落ちてしまった!慌てて照明を戻すも今度は明るくなりすぎ、その後にようやく落ち着いたのだった。コンクール最後のステージでこうしたハプニングが起きたのは残念で、あってはならないことだが、それをものともせず、ピアニストもオーケストラも何事もなかったかのように演奏を続けた(テレビカメラが多数入ったため電源が一瞬落ちたそうだ)。強靭なのは指だけではなかった・・ことも証明されたようだ。
さて、2日目の模様はこちらから。
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インゴルフ・ヴンダーはこの決勝のステージにおいて、全く隙のない演奏を披露した。金髪をなびかせながら登場した姿には風格すら漂い、確固たる自信を持ってオーケストラと向き合う。協奏曲1番第1楽章は落ち着いて聴いていられる安定した演奏でオーケストラとの呼吸も合う。確かな方向性を持った揺るぎないフレーズの運びに、音質を様々に変えて音楽に陰影をつけていく。第2楽章は気高さや誇りといった美意識がフレーズの端々に垣間見える。どちらかというと苦悩や感傷が昇華された音楽というより、優雅さと美しさを徹底的に極めた演奏。会場からは聴衆総立ちのスタンディング・オベーションが出た。(使用ピアノ:スタインウェイ)
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一次・二次予選で見事な演奏を見せたユリアナ・アヴディエヴァは、三次予選ではやや力んだ印象があったが、この日は途中からふっと力が抜けたのか、音に華やぎと色彩感が戻り、インスピレーションに富んだ演奏を見せた。特に第1楽章中間部のフレーズの美しさや、第2楽章での多彩かつ神秘性を帯びた音色で印象づけ、さらに第3楽章ではオーケストラと戯れるかのように自由に音を放っていく。この性格の描き分けは見事。各フレーズに濃厚な表情をつけながら、ドラマティックな音楽との対話を聞かせてくれた。(使用ピアノ:ヤマハ)
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ニコライ・コジャイノフは確かな打鍵から放たれる深い音で、オーケストラと共に奥行きある音楽つくりを目指す。拍をきっちり合わせようとやや曲想が単調になったり、オーケストラと合わない箇所もあったが、第2楽章は美しいメロディが途切れることなく続く。一次予選では多層な音質に驚かされたが、この日も深さ、鋭さの異なる音質を使い分け、音楽に抑揚をつけていく。まだ18歳、これからの成長が楽しみ。(使用ピアノ:ヤマハ)
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華道家の假屋崎省吾さんと、音楽評論家の萩谷由喜子さん。
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日刊紙"Chopin Express"の編集を手がけるエマ・ベイカーさん(右)普段はロンドンのグラモフォン誌編集者。この日刊紙は毎日会場で演奏CDと一緒に配布される。「準備にかなり時間をかけました!」
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クラシカ・ジャパンの制作部スタッフ一同。左よりディレクター矢吹飛鳥さん、プロデューサー高橋義人さん、通訳のヨランタさん。ファイナル前日に到着。機材を担ぎ、寸暇も惜しんでカメラを回すタフな方々。ショパン国際コンクールの模様、入賞者や審査員インタビューなどが放送される予定。