ピティナ調査・研究

ショパン国際コンクール第二次予選・3日目午後

第二次予選3日目、二次予選もいよいよ後半に突入!この日の様子は・・?

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ユーリ・シャドリン(Yury Shadrin)は、ワルツop.34-3は単なる和音の連打になってしまう箇所があったが、中間部は力強いワルツのステップを踏む。マズルカop.33は軽いタッチながら深い音で始まる。no.3ではリズムの勢いが有り余り右手が雑になる部分があったが、no.4はゆったりしたテンポでたっぷりと歌う。エチュードop.25-11(※スケルツォop.54から変更)はやや荒い箇所もあったが、最後のアンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズでは勢いとエネルギーに満ちる。ポロネーズのリズムに躍動感があり、最後に魅せた。その他バラード3番op.47。(使用ピアノ:スタインウェイ)

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イタリアのイレーネ・ヴェネツィアーノ(Irene Veneziano)は、明るい音質と朗らかな歌い方がプログラム全体に行き渡る。マズルカop.59は自然で長いフレージングで、明るい日差しの下で唄う印象。心が軽やかになる。ポロネーズop.44はややリズムが重たくなったが、バラード1番op.23は第2テーマの歌わせ方がしなやかな魅力に溢れ、スケルツォ4番op.54も中間部のメロディラインが柔らかい。彼女の特徴が最も生かせたのはワルツop.34-1だろうか、この曲で締めくくった。(使用ピアノ:ファツィオリ)

中国のジャイー・スン(Jiayi Sun)は、一次予選では精気ある音で大きな音楽作りをしていたが、二次予選でもやはり、アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズなどで雄大な音楽を描く。リズムなどはきちんと刻んでいるが、時折細部にまで行き届かない時があるのが惜しい。マズルカop.33は静寂に満ちた音で始まり、no.3では3拍目にアクセントをしっかりつけて印象つけ、no.4は左手がやや重く間延びした印象になったが落ち着いた様子で終わり、作品群としての一貫性は感じる。その他にバラード3番op.47、ワルツop.18、舟歌。(使用ピアノ:スタインウェイ)

フランスのギョーム・マッソン(Guillaume Masson)は、前奏曲op.28-15「雨だれ」で始まり、課題曲をはさんで、op.28-24で終わるというユニークなプログラム。一次予選は個性を大事にするアプローチであったが、この日はポロネーズop.44やマズルカop.33-1などでペダルを多めに使い、幻想性を追求する。左手の勢いがよく右手が少し埋もれてしまう箇所があったが、アーティキュレーションなどの工夫が所々に見られた。その他にワルツop.34-3、舟歌。(使用ピアノ:カワイ)


<会場でキャッチ!> 海外のジャーナリスト
メーレン・マクラーレンさん(Merran Mclaren)/オーストラリア
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「一次予選は国籍を問わず、皆さん大変優れた音楽性を示してくれました。二次予選はヴィルトゥオーゾ的な演奏が多くなりましたが、音量が大きすぎたり、曲によって出来に差があったりという場合もありますね。私が期待しているのは、洗練、驚き、そして高貴さを持った演奏です。「驚き」とは、心が躍り、陽気にしてくれる演奏ですね。ショパンの音楽は、歓喜と悲哀を含んでいます。皆さん一生懸命勉強なさっていますので、その中にショパンの音楽が持つ本能的な愛や快活さ、そして(演奏者自身の)音楽作りへの愛情を感じられる演奏に巡り合いたいですね。」