ショパン国際コンクール第二次予選・2日目午前
天候に恵まれているワルシャワ。コンクールが始まって1週間経ったが、お蔭様で晴天続きである。第二次予選2日目の午前中は、女性ピアニストが続き華やいだステージに!
日本の片田愛理さんは、ノクターンop.55-2から。芯のある力強い音で始まり、ドラマの始まりを予感させる。マズルカop.17は情感に溢れ、特にno.2は切なさを帯びた旋律の歌い方が秀逸、no.3はリズムの面白さと叙情性を、no.4は郷愁や無常観など、短い曲に様々な心情を微細に織り込んだ。優美な舟歌を挟み、ワルツop.64-3は羽のような軽やかさで3拍子を刻み、op.70-1は澄んだ音で少女のような純粋さが際立つ。最後のアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズは、錦糸がさらさらとほどけていくような滑らかなアンダンテ・スピアナートから始まり、ポロネーズの入り方も次第に物語が劇的に展開されていくことを期待させる。ノクターンや舟歌と同じく、最後は華麗に締めくくった。個性を生かしたメリハリあるプログラム構成と演奏に、会場からブラボー!(使用ピアノ:カワイ)
同じく自然な叙情性を発揮したのは、レオノラ・アルメリーニ(Leonora Armellini)。マズルカop.33は左手のリズムが軽やかで自然で、切なさを帯びた右手も印象的。ワルツop.18も同じように女性らしいしなやかさがあり、適度な揺らぎがある軽やかなワルツの3拍子が心地よく刻まれる。バラード3番op.47は節度のある音楽の運び。ノクターンop.48-2、舟歌では優れた叙情性を示す。最後のポロネーズop.53もイメージを逸脱しない、節度ある演奏で締めくくった。(使用ピアノ:カワイ)
しっかりと濃い味付けをしたのは、ウクライナのアナ・フェドロヴァ(Anna Fedorova)。一次予選では情熱的で説得力あるバラード4番が印象的だったが、この日も情熱的な演奏に拍車がかかる。幻想曲は激しいパッセージの後に緩やかで穏やかな表情を見せ、静と動のコントラストをはっきり打ち出す。バラード3番op.47、ポロネーズop.44も同じように激情と冷静の表情を交互に使いながら、音楽を前に前にと進めていく。ワルツop.34-1は可憐に仕上げるが、中間部は濃厚な歌いまわしでリズムにもやや重量感がある。マズルカop.24はno.1やno.3の流れるような優美さの一方で、no.2は少しリズムが重たくなった。とはいえ、身体の中に宿る音楽を前に推進させていくエネルギーに満ちている。ステージ上で大きく見える人である。(使用ピアノ:カワイ)
さらに濃い味付けをしたのは、中国のフェイ=フェイ・ドン(Fei-Fei Dong)。この日は黄色とオレンジのドレスで登場。冒頭のマズルカop.17-1では、いきなり中間部で予想を裏切るフレージング。no.3ではルバートをかけまくりno.4は中間部でリズムを強調する。良い悪いはともかく様々な演出を施したマズルカだった。ワルツop.42や舟歌は比較的おとなしめだったが、大きなフレーズで濃厚に歌うのは一次予選と変わらない。ポロネーズop.44は軽めに始まるが、次第に激しさと重さを増してくる。tempo di mazurkaで濃い表現を予想していたが、ここは意外とさらりと進んだ。最後のロンドop.16は彼女のコミカルな面が出て、パントマイムのように主題に様々な表情をつけていく。解釈の云々はさておき、表現を心から楽しんでいる様子は伝わってくる。(使用ピアノ:スタインウェイ)
「今、コンクールのバックステージを取材しています!このコンクールには興味深いピアニストが沢山集まっていますね。ヨーロッパだけでなく、アジアのピアニストにも優勝の可能性があると思います。」
席で水を飲む人、写真を撮る人、演奏中に携帯を鳴らす人・・・半径5メートル以内で起こることは瞬時に察知し、すぐに飛んできて注意する。素晴らしき耳と眼力の持ち主。彼女たちがいれば会場は安泰だ。「本日もお疲れさまでした!」。