ピティナ調査・研究

ショパン国際コンクール第二次予選・1日目午後

第二次予選初日午後、見事な演奏が登場!

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フランスのエレーヌ・ティスマン(Hélène Tysman)は一次予選で見せた上品な印象を残しながら、二次予選では静かな説得力を見せた。それはフランス語のリエゾンのように、フレーズとフレーズの間、曲と曲の間の美しい繋ぎ方にある。例えばマズルカop.24no.3では最後オクターブの印象を残して曲を閉じ、そのままno.4がオクターブから始まって半音ずつ下行する。この繋ぎの美しさは、最後の前奏曲(op.28-1から12)でさらに説得力を増す。曲の美くしさもさることながら、曲と曲の相対的な位置づけを考えて連続性を持たせ、その間を目に見えない音の粒がつないでいるよう。前の曲の最後の音が消え入り、次の曲の最初の音が満ちてくる軌跡が見えるようである。またディナーミクは幅広くはないが表情豊かで、静かな囁きの中に一瞬よく通る声で言葉を発する。例えばマズルカop.24-2は後半のマズルカのリズムを、前奏曲はno.7の16小節を、極めて美しく響く音質で印象づける。1点に強い光をあてるレンブラントの絵を思わず連想した。ポロネーズop.53は静かに執拗に訴えかける左手のオクターブ連打が印象的。他にバラード4番op.52(使用ピアノ:ヤマハ)

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ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov)は、一次予選で陰影を帯びた幻想的な美音を印象づけたが、二次予選ではそれをどこまで生かすことができたか。彼は音楽の中で、幻想と現実の間を行きつ戻りつする。ワルツop.18はその美音が生かされた1曲。舟歌は第1テーマが静かに始まり、第2テーマで幻想の世界へ没入する。左手の優しい波に乗りながら、右手はずっと幻想の世界を探りながらさ迷っているよう。再現部では力強く現実世界へ戻ってくる。マズルカop.56no.1ではソプラノが響きすぎて不明瞭になることがあるが、no.2はそれが幻想的な効果を与える。アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズもやはり幻想的に仕上げる。ポロネーズのリズムがややぼやけることがあるのが残念。全体として構成感はやや薄いが、圧倒的な美音と幻想的な世界が印象に残る。他にスケルツォ3番op.39。(使用ピアノ:ファツィオリ)

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一次予選で洗練されたアプローチを見せた永野光太郎さんは、二次予選ではワルツやマズルカなどのリズムの面白さを存分に表現した。特にマズルカop.59-3は躍動的なリズムをきちんと踏みながら多彩な表情をつける。ワルツop.34-1も軽やかに3拍子のリズムを刻みながら、右手を自在に遊ばせる余裕がある。中間部も甘美さがあり、独特の創造力を感じさせた。こうした小品はとても面白く味付けする。ポロネーズop.26-1もワルツのような軽やかさがあり、続けて奏されたアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズもその空気感を纏う。後半はやや集中力を保つのが大変だったと思うが、最後まで健闘が光った。他にエチュードop.25-7、舟歌。(使用ピアノ:スタインウェイ)

ジェイソン・ギルハム(Jayson Gillham)は、リズムが正確で一定。それがワルツop.34-1、マズルカop.59ではややぎこちなくなってしまったが、ポロネーズop.53やバラード4番op.52、舟歌などの大曲では本来の大らかで伸びやかな一面が生かされていた。子守唄は生き生きした音で中盤の下行するパッセージも美しい。会場では結構人気!(使用ピアノ:スタインウェイ)

  • Hélène Tysmanさんの苗字カナ表記を「ティスマン」に変更させて頂きました。ご了承下さい。
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