第11回 チャイコフスキーの小品を味わう
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今日は、チャイコフスキー(1840-1893,ロシア)の、あまり知られていない、美しい小品をご紹介します。
チャイコフスキーは、「四季」をはじめ、数多くのピアノ曲を残しましたが、その人気はいまひとつで、「四季」「ドゥムカ」など一部を除いて、ほとんど演奏されることがありません。
それは、チャイコフスキーの音楽が、概して、管弦楽のひびきで発想されているからです。例えば、有名な「四季」も、ピアノ曲としては演奏効果を欠いた地味な作品ですが、オーケストレーションを施すとしたらどうなるか...を意識しながらタッチを使い分けて演奏すると、途端に、みずみずしい息吹とともに作品が蘇るのです。
今日は、そんなチャイコフスキーの愛すべき小品を2曲ご紹介します。
「夜想曲」は、珍しくピアニスティックな美感をも備えており、澄んだ調べが切々と紡がれていく逸品です。最小限の音符による造りが、ピュアな透明感を生み出しています。
中間部はあたたかな弦楽合奏になります
挿入されるスタッカートは、pizzicatoを意識して書かれたものでしょうか。
「瞑想曲」は、同じ調性の、交響曲第5番第2楽章を彷彿とさせる音楽で、甘美な歌心にあふれています。
特に両者の再現部(交響曲では、ヴァイオリンの旋律にオーボエのオブリガートが重なります)は酷似していると言えます。その意味で、この曲にアプローチするうえで、交響曲第5番のスコアを参照することはきわめて有益だと思います。
この作品はきわめてポリフォニックに書かれており、各声部に細かく指示された休符や音価の違いなどからも、管弦楽で着想されたことは明らかです。感傷に流されず、悠然としたテンポに乗せて、管楽器の端正な音色、弦楽器の伸びやかでふくらみのある音色を意識的に使い分けながら立体的に弾くと、作曲者の意図に近づけるのではないでしょうか。
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