第08回 ピアノでクリスマスを
いらっしゃいませ。カフェ・モンポウにようこそ。
いよいよ師走も半ばを過ぎ、クリスマスが近づいてきました。
今日は、クリスマス・キャロルの旋律に基づいたピアノ曲を少しだけご紹介しますので、
皆さんもぜひご自分でお弾きになって楽しんでみてください。
「「楽しいクリスマス」の夢」は、皆さんご存じの「きよしこの夜」の旋律によるパラフレーズで、デンマークの作曲家カール・ニールセン(1865-1931)によるものです。1分あまりの小曲ですが、最後のAdagio以降にあらわれる高音域の装飾的なパッセージが、星の輝きを想わせるような趣で印象的です(このような、音域を空間に見立てたメタファーは、歌曲の分野でもしばしば用いられます)。ニールセンのピアノ曲は、叙情的な小品が中心ですが、独特のハーモニーがスパイスとなっていて、魅力的な佳曲が多くあります。
ニールセンは、100クローネ紙幣に肖像がえがかれているほど、デンマークではポピュラーな存在で、今日でもその合唱曲や歌曲は学校や家庭でひろく歌われているそうですが、ドラマティックで親しみやすい6曲の交響曲は、デンマークに留まらず、世界で根強い人気を誇ります。少し話が脱線しますが、ニールセンの交響曲は、ティンパニと金管楽器が大活躍し、管弦楽法もすこぶる吹奏楽的なので、特に吹奏楽ファンには強烈におすすめできます(とりわけ第3番「ひろがりの交響曲」、第4番「不滅」)。ちなみに、私も昔、吹奏楽部でティンパニを叩いていたりした経験がありますが、ニールセンの交響曲を聴くと、その吹奏楽チックなサウンドと旋律に、妙に郷愁がかきたてられるものです。
「クリスマスツリー」は、晩年のフランツ・リスト(1811-86)が孫娘ダニエラにプレゼントした愛らしい小品集です。ダニエラは、次女コージマとハンス・フォン・ビューローの娘で、リストの初孫。しかしコージマはほどなくワーグナーとの不倫に走ってしまったので、リストはダニエラを不憫に思い、ますます愛情を注いだといいます。この曲集が贈られたときダニエラは16歳。彼女に弾いてもらうことを想定して平易に書かれていますが、その優しい音遣いには「フランツおじいちゃん」の愛情がにじみ出ています。
この曲集に収められた小品のいくつかは、クリスマス・キャロルの旋律に基づくもので、今日ご紹介するのは、「Adeste Fideles(神の御子は今宵しも)」の旋律に基づく第4曲です。
リストは、信仰を深めローマで修道士となってから、キリスト教に題材を求めた作品を多く書くようになりましたが、この、孫への優しいプレゼントにも、その深い信仰があらわれ出ていると言ってよいと思います。
このようなクリスマス・キャロルに基づくピアノ曲を弾いてクリスマスを楽しむというのも、なかなか乙なものだと思います。皆さまも、楽しいクリスマスをお過ごしくださいね!
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