ピティナ調査・研究

第14回:山口信一さん・渡辺千歌子さん(大東楽器/大阪)

第14回:山口信一さん・渡辺千歌子さん大東楽器/大阪

私たちピティナの活動は、各地域の音楽教室の先生方の熱心な活動によって支えられています。しかし音楽教室だけでは、地域固有の複雑な人間関係や利害関係が絡むことも多く、どうしても一丸となってまとまりにくいのが実情です。各支部が、活発に活動できているのは、黒子となって束ねることに誠心誠意尽くして下さる方々がいるからです。
私たちは、そのような方々を、「エリア・ミュージック・サポーター(AMS)」とお呼びし、これまでご一緒した取り組みを、この連載を通じて1年にわたりご紹介して参りました。その中には他の地域でも応用できる取り組みや、生徒集めの役に立つ数多くの情報が寄せられました。あまりに「いい話」でほろりとすることも・・・
ご紹介したAMSの人数は、2ケタに乗りましたが、調べれば調べるほど奥が深く、ご紹介したい方は増えるばかりです。今後もできる限りご紹介していきますので、地域の活動にお役立て願います。 引き続き、大内孝夫さんによるインタビューを通じたシリーズをお楽しみ下さい。

取材:大内孝夫


大阪府枚方市。関西圏以外の人には馴染が薄いかもしれないが、人口約40万人で大阪府第4位、「ひらパー」の愛称で親しまれる「ひらかたパーク」は、関西圏ではUSJに次ぐテーマパークだ。この大阪市と京都市の中間に位置する交通の要地に事務局を置く枚方支部にうかがった。


まず枚方支部について、お伺いできますか?

大東楽器株式会社
山口信一さん:大東楽器ヤマハピアノストア 店長
渡辺千歌子さん:ミューズデュオ 店長

はい。支部の設立は2003年9月ですから、活動開始から約17年です。会員数は129名で、枚方市の他、大東楽器本社がある大東市を含む北河内7市、大阪市、北摂地域と多くの地域の先生方にご参加頂いております。

最近は色々な動きが出てきているようですね。

はい、まず支部が長年目標としていたステーションの設立。19年3月「NEYAGAWAはちかづきステーション」を立ち上げることができました。その翌月には、私ども大東楽器の「ヤマハピアノストア」がオープン。地域最大規模で、50台のピアノを展示できるほか、100名以上収容可能な施設です。コンペやステップ、セミナーなどの会場としてもお使い頂けるようになりました。

大東楽器ヤマハピアノストアサロン
2020年10月3日 NEYAGAWAはちかづきステーションによるステップ(参加者82組)が終了。 安堵のスタッフ一同とアドバイザー山上里衣子先生・赤松林太郎先生

それにしてもすばらしい会場ですね。大東楽器さんはどのような思いでこの会場を作られたのですか?

そうですねぇ・・・3つあったと思います。まず我々自身。これまでの楽器展示は、各拠点小規模店舗に分散していました。これでは数台のピアノとカタログでしかご案内できません。それを一カ所に集約し、訴求力を高めたいと考えました。そしてお客さま。私たちの取り組みは、結果としてより多くのお客様の、よりご満足いただける楽器選びに繋がると確信していました。そしてご指導される先生方。セミナーやコンサートが開催できる会場を備えて、もっともっと応援したい、との思いです。

すばらしい! しかし、そうして立ち上げた矢先にコロナが・・・

2020年11月14日・15日のブルグミュラーコンクールの準備が完了した受付近辺

ええ。昨年11月、初開催のブルグミュラーコンクール<門真地区大会>をここで終え、支部全体に活気を感じながら新年を迎えることができただけに、ショックは大きかったですね。

やはり大打撃でしたか。

それはそれは凄まじいものです。4、5月の営業活動は非常に厳しく。目の前が真っ暗になりました。6、7月に入ってやっとお客様が戻り始め、その後入門層を中心に、電子ピアノのご契約が増え始めました。オンラインレッスンに対応するため、アコースティックをお持ちの方が新たにお買い求めるケースもありました。その他防音設備や消音ユニットの需要が高まって、商品が動き始めた感じです。

それは大変な思いをされましたね。とはいえ、昨年からの流れは途切れていないとか。

はい。コロナの影響もあり、20年10月に2回開催されたステップは、期待できないと思っていました。ところがそれぞれ100名くらいの生徒さんにご参加頂け、とても嬉しかったです。続く11月の第2回ブルコン<門真地区大会>には何と159名も! 昨年は1日開催でしたが、今年は勢いがありそうなので、2日間日程を計画し大正解でした。コロナによって、人前で弾く機会が減った影響もあると思いますから油断は禁物ですが、楽器店としてピティナ支部運営に携わる意味が再確認できたというか、正直、高揚感みたいなものがあります。

それはよかった! 更なるご発展に向けたチャレンジに期待しています。ところで少し話は戻りますが、コロナ禍でのピティナ本部の対応はいかがでしたか?

あの時の本部の対応はすばらしかったですね。コンペの中止を決めるや、すぐに「課題曲チャレンジ」開催を決め、全支部にオンライン説明会を開くスピード感は、正直見習わなければ、と思いました。私たちと違って、全国組織をあのスピードで動かすのですからねぇ。すごい!しかも問い合わせ時の対応の均質性も素晴らしかったです。

いやいや、新しい取り組みに対する反応は様々で・・・多くの反対意見も頂戴し・・・(やや恐縮気味)。

まあまあ、堀さん、ここは素直に喜びましょう(笑) 最後に今後の抱負をお聞かせ下さい。

とにかく支部としての仲間を増やしたい。もっと人を集める流れを加速させないと。
これまでは枚方市地域中心でしたが、大日に拠点ができたことで、北摂の吹田市や豊中市など、これまでご縁の薄かった先生方とも繋がりたいですね。そのためには、楽器だけでなく、楽譜コーナーも充実させないと。その他にも先生方から頂くご要望にしっかりお応えし、絆を深めていきます。

楽譜といわず、書籍もお願いしますよ。

(爆笑)

勢いに乗る枚方支部。お膝元の枚方市には、21年9月枚方市総合文化芸術センターが完成する予定だ。1,500人弱を収容する大ホールの他、小ホールやイベントホールや美術館なども備える。枚方市の文化芸術への力の入れようがわかるというものだ。枚方支部の今後の展開に注目したい。

取材日:2020年12月8日