ピティナ調査・研究

第8回:西村彰子さん(すみやグッディ/静岡)

第8回:西村彰子さんすみやグッディ/静岡

「音楽は世界の共通語」という言葉があるように、音楽はグローバルな視座で捉えられることが多い一方、民族音楽にはじまり、国歌、民謡、更には校歌に至る地域性も併せ持っています。音楽教室は、その地域の音楽を支えるコミュニティとしての機能が期待されているわけですが、音楽教室だけでその機能が果たせるわけではありません。そこでピティナでは楽器店や調律師など、「地域の音楽教育を支える存在」の方々を「エリア・ミュージック・サポーター(AMS)」とお呼びすることとし、AMSの方々と連携した取り組みを始めました。すると、次々と音楽教室の先生方に活用して頂きたい情報や、ピアノにまつわる深い~ぃ話が出て来るではありませんか。それらを是非先生方に知って頂き、お役立ていただきたいと考えました。AMSのみなさんの素晴らしい活動を、大内孝夫さんによるインタビューを通じたシリーズでお伝えします。

取材:大内孝夫


もっと多くの先生方に、ピティナの魅力を知って欲しい!―――そう熱く語るのは、最近新入会員急増中のピティナ静岡支部事務局員の西村彰子さん(すみやグッディSBS通り店ご勤務)。現在会員数は99名で、そのうち23名はここ3年の入会者。入会検討中の先生も複数おり、大台変わりを間近に控える。ステーションも増え、現在6つと勢いに乗っている。

静岡県は「楽器王国」と呼ばれるだけあって、音楽が盛んで楽器店も多くあります。当然楽器販売では競合しますが、楽器店の有志で定例的に集まる会があり、楽器店運営や業務に関する勉強会、懇親会などを開催しています。楽器店同士の横のつながりが強いことは静岡県の大きな特徴で、強みでもあると思います。

ここ最近、支部にも大きな変化があった。

5年ほど前にセミナーやステップなどイベント別の組織から、ステーション中心の運営に切り換えました。それと昨年から支部総会を毎年春の恒例行事に。またピティナ会員以外の先生にも関心を持って頂けそうなテーマを探し、多くの先生が参加しやすいイベントを増やしています。このような取り組みで、先生方の交流できる場が増え、ピティナへの理解が深まったことが、新入会員増加の大きな要因ではないでしょうか。新しい血が入り、コミュニケーションも活発化したことで、先生方と支部との相互理解も深まりました。だから、みんな同じ方向を向いて一緒にやれている、という実感がありますね。これに水を差さぬよう、先生方から頂いた提案はできる限り実現させるよう心掛けています。

この日はたまたま厚地和之先生の「電子ピアノ活用術セミナー」が開催されていた。電子ピアノで学習する生徒が増え続ける昨今、会員か否かに関わらず関心の高いテーマだ。参加者の多さがそれを物語る。それでも静岡市や県内全体では、まだまだピティナ支部活動の認知度は低い、と悔しがる。

ピティナはね、コンクールのイメージが強すぎるんですよ。先生の中にはコンペとステップの違いすらわかっていない方も多くて。今日のようなセミナーや日頃の営業活動を通じて、ピティナを正しく理解して頂きたいですね。

なるほど。多くの場合、セミナー司会者は、講師の紹介と2、3の宣伝文句を話す程度。しかし今日の西村さんは、セミナーの前後でピティナや支部の活動内容を詳しく、丁寧に説明していた。

取材風景

今日は会員とそうでない方が大体半々。こういう時にピティナをしっかりアピールしないと。コンクールは確かに大きなイベントだけれど、それはピティナの一部に過ぎない。それをいつも強調しています。またピアノの先生は孤独になりがちなので、仲間に入りませんか、とも。仲間がいるってとっても素敵なこと。私だって会社にピティナ担当を告げられた3年前、じつはとっても不安で孤独を感じました。すてきな先生ばかりで、それが却って近寄り難く(笑)でも、一緒にステップやサークル活動の準備をしていると自然に打ち解けて。そうなると、今度は楽しいことばっかり!だから1人でいい、と思い込んでいる先生をお見掛けすると、もったいない、って思っちゃう。この幸せを分けて差しあげたい、とも。あとね、コンペもステップも、裏方には裏方のドラマがあるんですよ。

西村さんには忘れられないシーンがある。舞台袖で出演者を応援していると、ある男の子がピアノに向かう途中で振り返り、西村さんと目を合わせてからうなずいた。「頑張るよ」「頑張って!」―――そんな会話なき会話が、今も西村さんの胸を熱くする。
そして「裏方」といいながら、じつはプレーヤー。音大卒ではないが、4歳から習ったピアノをほとんど途切れることなく続け、ここ数年はステップにも参加している。しかも昨年は、ピアノ・ソロと連弾の2枠出場! 「継続表彰」も受賞した。みんなにも呼び掛け、現在社員4名がステップに参加している。今年の新卒社員4名も新たなターゲットだ。 そんな西村さんには大きな夢がある。

子どもが女の子で、もうすぐ5歳。まだまだ先の話ですが、子どもと連弾でコンペに出られたらなぁ、って。

そんな先でもないよ。連弾の「中級A」なら高学年から出られる。

本日の講師、ピティナ歴なんと40年の厚地先生から、夢のような言葉が飛び出した。

2020年2月9日厚地和之先生セミナー
2020年2月9日セミナーの司会をする西村さん

本当ですか!

西村さんの目が輝く。あと5年―――夢が、近未来の現実となった瞬間だった。

娘には「私の子である限り、ピティナは避けて通れないわよ」と(笑) 心の中ではそんな風に思っています。冗談はさておき、娘の人生がピアノとともにあって欲しいですね。

一瞬、母親の顔が覗く。これまでピアノとともに歩んできたからこその思いだろう。
静岡で出会ったピティナ熱。コロナウィルスはまっぴらご免だが、この熱には感染力があっていい。

(取材日:2020年2月9日)