ピティナ調査・研究

テーマ型情報交換会レポート:部活や学業とピアノの両立を考える

新しい生活様式・新しいレッスンスタイル
「新しい生活様式」のレッスンが求められる中、感染予防対策を実施しつつ、対面とオンラインの特性を生かしたレッスン・指導・アドバイスを工夫している先生方がたくさんいらっしゃいます。「Stay at Home, Keep on Music」では、少しずつでも、各地の先生方の体験・情報・ノウハウをできる限り多く集め、この状況のなかでできることを応援してまいります。
テーマ型情報交換会レポート「部活や学業とピアノの両立を考える」

2021年4月14日(水)、テーマ型情報交換会が実施されました。「部活や学業とピアノの両立を考える」というテーマのもと6名の指導者が集まり、中高生の生徒さんの継続について、多感な時期に差し掛かる生徒さんや保護者へのお声がけなど、ご自身の体験談や課題をお話しいただきました。たくさんのアイディアを共有しましたので、その一部をQ&A方式でご紹介致します。

部活動や学業で忙しくなってきた生徒さんに対して、どんな工夫をされていますか?
  • 小学校6年生の終わりくらいに月2回レッスンへの移行を一つの選択肢として提案します。希望された方は、45分×2回のペースに移行しています。また、自宅練習の「励み表」を活用しています。生徒自身に記録をつけてもらい、表が埋まっていない時には「忙しかった?」とヒアリングをしています。(永田 雅代先生/静岡)
  • 小学校6年生まではペースを緩めずに課題を出しますが、中学校になってからは「継続すること自体が素晴らしいんだよ」と保護者、生徒さんの両方にお声がけしています。最近ではYouTubeの影響もあってか、私の教室でも「ポップスを弾きたい」という生徒さんがいます。そういった場合は、ポップスの目標をステップに設定して、教室の発表会ではなるべくクラシックを弾いてもらうようにしています。(小林 美恵子先生/岡山)
練習を習慣化してもらうためにどんなお声がけをしていますか?
  • 「10分だけ、ハノンだけでもいいから毎日弾く時間を作ってね」と声かけしています。また「学校に行く前」「ごはんの前や後、お風呂の前」にやるといいよ~、と生活の一部に練習を組み込んでもらえるような声かけを工夫しています。(田中 里未子先生/広島)
  • 時間がないという子にはレッスンの中で「今から1分間練習してみて」と提案し、実際に練習してもらいます。そうすることで1分の長さを体感し、その中で何ができるか考えるきっかけを作っています。(S.S.先生/栃木)
退会に至るケースにはどんなものがありましたか?また、気をつけていることはあります
か?
  • 保護者が継続に賛成でも、本人がピアノを続けたいと思わない子がいます。「環境を変えたい」と思いはじめる時期のようです。わたしの教室では、レッスン料は実際にレッスンした分を翌月に精算する形にしているので、まだ通いやすい方かなと思います。「部活が忙しい時は休んでも大丈夫だよ」とお声がけもしています。あとは、発表会やステップを目標にして、モチベーションをあげてもらっています。(中野 美香先生/広島)
  • 新しい環境(中学、高校)に移ったとき、ピアノとの付き合い方を考えるきっかけになったのかな…という子はいました。その生徒さんは高校性になるまで続けてくれましたが、退会後も連絡を時々取り合っていました。大学合格のお祝いをしたときには、受験の時「ピアノが気分転換になった」と話してくれましたよ。
    生徒さんに対するヒアリングを大切にしています。宿題を自分で決めてもらったり、学校生活のことについて聞いたり…週に1回という限られた時間でも、生徒さんのことをよく理解できるように雑談を大事にしました。(S.S.先生/栃木)
  • 受験をきっかけに(練習が)1時間だったものが10分になってしまい「月謝をはらっているのにこれしか練習しないのはお金がもったいない!」と退会してしまうケースがあります。わたしとしては、続けることが大事だと思いますし、何か一つ特技として身に着けられるもの、人生の引き出しを作ることの大切さをお伝えできるよう心がけています。(小林 美恵子先生/岡山)
  • 保護者の方が忙しくなってしまうパターンや受験を機に退会されるパターンなど、色々ありますが、どの方にも「いつでも気楽に戻って来てね」とお声がけしています。高校生や、大人になってピアノを習い直す方も多いですよね。コロナを機にピアノを再開される方もいます。いったん勉強や部活でピアノを辞めることになっても、また再開しやすい言葉がけや、雰囲気作りも大切かもしれません。(渡辺 友華先生/山梨)
ピアノを続けることの良さ、意義についてどのようにアプローチしていますか?
  • 樹原涼子先生の「こどものスケール・ブック」では、スケールを感覚や雰囲気ではなく、数学的に考えています。こういった例をだして「数学」と「音楽」がリンクしているという事を保護者にお声がけしています。(永田 雅代先生/静岡)
    参考:樹原涼子 著「ピアノランド こどものスケール・ブック」
  • ピアノを弾くことで、周りの人へ感動を発信できるのがとても尊いことだと思います。また、曲を聴いて浮かんだイメージを話し合うことで表現のボキャブラリーを培うなど、他者とのコミュニケーション力を育むツールとしてもピアノは素晴らしいという事を積極的に伝えていきたいです。(渡辺 友華先生/山梨)
使用している教材でオススメのものはありますか?
  • 名曲アルバムを一冊持っていたらどうでしょう。曲を知っていても楽譜がなければ弾けませんから、挑戦につながればという思いで、学校を卒業する節目にプレゼントしています。ブルグミュラーの18の練習曲をあげる場合もあります。(中野 美香先生/広島)
    参考:ピアノ名曲アルバム初級(カワイ出版)
  • 中高生ならば、ショパンのエチュード(Op.25-1、25-2、10-3など)やワルツに取り組むことで「本格的にピアノを学んでいる!」という気持ちになってもらえます。(田中 里未子先生/広島)
  • 継続してくれる子には初見力があるという特徴があります。ですので、バイエル30番あたりの作品を中高生用の初見課題として使っています。わたしがA2級レベルの内容の書き込みをして、それを見ながら表現の細部まで気をつけて初見で弾いてもらいます。(小林 美恵子先生/岡山)
参加者の感想より
  • 色々なケースを様々な先生から伺えて参考になりました。
  • 中学高校という難しい時期に工夫をされている方が沢山いることが分かって心強いです。
  • 「良い聴衆、音楽ファンを育てる」ということが大事だと思いました。

「新しい生活様式」でのレッスンが試行錯誤でスタートしています。小さな気づき、失敗談、試行錯誤を含めた多くの情報・体験談をお寄せいただき、先生方お一人ごとのレッスンをカスタマイズするサポートができればと願っています。「生徒に寄り添って、今できる、私なりの指導」を皆様と一緒に模索していきます。注)各事例を「推奨」するものではありません。また、各記事はその時点の状況です。

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