ピティナ調査・研究

会員情報交換会:受験とピアノの両立を考える

新しい生活様式・新しいレッスンスタイル
「新しい生活様式」のレッスンが求められる中、感染予防対策を実施しつつ、対面とオンラインの特性を生かしたレッスン・指導・アドバイスを工夫している先生方がたくさんいらっしゃいます。「Stay at Home, Keep on Music」では、少しずつでも、各地の先生方の体験・情報・ノウハウをできる限り多く集め、この状況のなかでできることを応援してまいります。
開催レポート:受験とピアノの両立を考える

2021年2月25日、オンラインにて会員向け情報交換会を開催し、12名の指導者にご参加いただきました。今回のテーマは受験とピアノの両立。幼いころからピアノに情熱を注いできた生徒さんが受験を機に離れてしまうというケースは多く、たくさんの指導者が頭を悩ませているのではないでしょうか。音楽を生涯の友として続けてもらうために、指導者としてどのようなサポートができるのか、それぞれのお教室でのアイデアを共有しましたので、その一部をご紹介します。

受験をきっかけにピアノを辞めてしまうことを防ぐにはどのようにすればよいでしょうか?
  • 中学受験を経験した生徒さん、6年生の後半から一度教本をお休みし、ディズニーの曲をゆっくり楽しみながら弾くというレッスンに切り替えたことで、ほぼ休むことなく続けることができました。進学後はピアノに区切りをつけたいという思いもあったようですが、ピアノの本当の面白さがわかるのは中学生になってから。作曲家や音楽史を学ぶことで表現の引き出しが増えるということを伝え、現在もソルフェージュとピアノを続けています。(柏木 静子先生/神奈川)
  • 私の教室では楽しむことを大切に無理のない範囲で続けてねと伝えています。ジャンルにとらわれず好きな曲を弾いたり、ジャズやポップスのかっこいいコードの勉強をすることで、入試直前まで楽しく通ってもらえるように工夫しています。(増井 優子先生/兵庫)
  • 保護者から課題やレッスンを減らしてほしいと求められることもありますが、私自身が子どもたちを中学受験させた経験から、レッスン時間を捻出したからといって、そのぶん学力が落ちるわけではないと話すことで、ご理解いただけることが多いです。どうしても練習時間が確保できないという生徒さんには、学校に行く前にルーティンとして組み込むようにアドバイスしています。(坂本 育美先生/東京)
コンクールで良い結果をいくつも残すほど熱心に取り組んでいた生徒さん、指導者としてはこの調子で続けてほしいのですが、親御さんは受験を見据えてピアノをペースダウンさせたいようで、どのようにすべきか悩んでいます。
  • 塾の課題も増えていく中で今まで通り練習時間を確保することが難しいことは承知していますが、目標に向かって努力をし、審査員によって採点され、当日実力を発揮できた人だけが結果を残せる、という点ではコンクールと受験はよく似ています。コンクールに出ることで人間的にも成長し、受験にも役立つということを伝えて親御さんを説得しました。(河股 紗耶先生/神奈川)
  • 受験を考えている生徒には、敢えてコンクールを勧めるようにしています。最初は受験準備と同時にピアノを辞めるつもりだった子も、コンクールに出ることで生活にメリハリが出て、ギリギリまで挑戦したいという思いに変わってきたようです。(三輪 志都先生/埼玉)
中学受験を控えている生徒さんの場合、何年生までコンクールに挑戦していますか?
  • 私の恩師の教室では、結果を残すことではなく、挑戦するということに重きをおいていたので、本人が受けたいと言えば受験の年でも挑戦していました。(河股 紗耶先生/神奈川)
受験を控えている生徒さんへの宿題の量やレッスンのペースがつかめません。受験勉強をしつつピアノの成長も望める適切な課題の量はどれくらいでしょうか?
  • 中学受験を控えている生徒さんは一時的に課題の量を減らし、ハノンすでに合格した曲のおさらいなど、負担にならないものを選んでいます。高校受験を控えている生徒さんには、忙しい中まずはピアノレッスンに来たことを褒め、勉強の息抜きになるような楽しいレッスンを心がけています。ピアノ教室が思春期の生徒さんにとって気軽に悩みや愚痴を言える場所でありたいと思っています。(坂本 育美先生/東京)
  • 受験期を迎える生徒さんは塾の課題も多いので、ピアノの課題もどこまでなら頑張れるのか、自分で決めさせています。自分のこなさなければいけない課題の量などを冷静に考えられる年齢に達しているなら、計画的に進めていけると思います。(S.S.先生/栃木)
  • 様子を見ていると、塾に入ったばかりの環境の変わる時期が一番大変そうだったので、譜読みはレッスン内で一緒にしてあげるなど、家での課題が難しくならないようにしていました。そして、生徒や親御さんとなるべく会話し、勉強の様子やピアノに充てられる時間がどれくらいあるかをヒアリングしています。最近は保護者の在宅勤務の影響で自宅での練習が難しいというケースもあり、そのような場合は音楽理論や曲の分析などを通して、弾く以外の側面から音楽への関心を刺激しています。(清水 信守先生/埼玉)
受験を控えている生徒さんには課題をセーブしつつ楽しくレッスンを続けてもらいたいのですが、普段は遊ぶ時間もないため、自分の好きな曲すら思いつかない、というケースもあります。レッスンでどんな曲を扱おうかと悩んでいます。
  • 学校の音楽の授業で鑑賞した曲や、歌っている曲の伴奏に取り組むのはいかがでしょうか?「音楽の先生が弾いていた曲を自分も弾けた!」という達成感につながると思います。(坂本 育美先生/東京)
  • 私はクラシックの名曲をゆっくり進めています。大人になっても弾ける曲に取り組むことで、モチベーションを保てると思います。(河股 紗耶先生/神奈川)
  • 自分の好みがわからないという生徒さんには、保護者にどんなテレビを見ているのか、どんな曲を聴いているのかをヒアリングし、こちらから本人の好きそうな曲を提案したところ、とてもやる気を出してくれるケースがありました。「好きな曲」「弾きたい曲」が自力で見つけられないときには、家族に聞いてみるのもいいかもしれません。(増井 優子先生/兵庫)
受験が終わった後、スポーツ系の部活とどう両立していくべきか悩んでいます。
  • 柔道や水泳の選手でもピアノが弾ける人がいるようで、そのような情報を常にストックしておき、「ピアノとスポーツどちらもできるってすごいよね!」と普段から話しています。試合などで大変そうなときは、こちらから日にちの変更などを提案し、無理なく続けられるように配慮しています。(坂本 育美先生/東京)

「新しい生活様式」でのレッスンが試行錯誤でスタートしています。小さな気づき、失敗談、試行錯誤を含めた多くの情報・体験談をお寄せいただき、先生方お一人ごとのレッスンをカスタマイズするサポートができればと願っています。「生徒に寄り添って、今できる、私なりの指導」を皆様と一緒に模索していきます。注)各事例を「推奨」するものではありません。また、各記事はその時点の状況です。

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