会員情報交換会:大人の初心者・愛好家向けのピアノ教材を考える
新しい生活様式・新しいレッスンスタイル
「新しい生活様式」のレッスンが求められる中、感染予防対策を実施しつつ、対面とオンラインの特性を生かしたレッスン・指導・アドバイスを工夫している先生方がたくさんいらっしゃいます。「Stay at Home, Keep on Music」では、少しずつでも、各地の先生方の体験・情報・ノウハウをできる限り多く集め、この状況のなかでできることを応援してまいります。
開催レポート:大人の初心者・愛好家向けのピアノ教材を考える
2021年1月21日、オンラインにて会員向け情報交換会を開催し、15名の指導者にご参加いただきました。今回のテーマは、大人の初心者や愛好家向けのピアノ指導について。教材や練習法、さらには生徒さんへの声がけの方法など、幅広い年齢層やレベルを指導する上で役に立つ情報を共有しました。一人一人のニーズに耳を傾け応えていくためにも、指導の引き出しをさらに増やしていく必要があると、改めて実感する機会となりました。
大人の方向けのテクニック教本はどのような教材を使っていますか?
- ピアノの経験が長い方にはツェルニーやモシュコフスキーの練習曲をおすすめしています。大人になってからピアノを始めた方には、お子さんと同じ教材を使っていますが、「この教材を地道に頑張れば、将来的にはこんなに難しい曲が弾けるようになりますよ」と上級のものを見せることで、プライドを傷つけることなく進めることができます。(大塚 千恵子先生/山梨)
- ハノンから必要最小限のものを抜き出した『コンパクトハノン』(※)を使っています。全部弾いても30分という手軽さでおすすめです。(山中 浩代先生/千葉)
※こちらの楽譜は現在絶版となっております
- 『大人のためのテクニックマスター』や、『大人のためのポピュラーバイエル』を使っています。指を速く動かす練習も大事ですが、多声の曲を美しく弾くスキルを身につけることも必要なので、『ポリフォニーアルバム』を勧めています。(仁藤 歩先生/静岡)
最近はシニアの生徒さんが多いのですが、中には骨が変形してしまっていたり、手を開く際に痛みを感じる方もいらっしゃいます。子どもとは骨格もそれぞれの身体の調子も違う中で、どのように脱力やテクニックについて指導すればよいか迷います
- 長くピアノを続けていけるよう、手や身体のフォームについてはきちんと指摘していますが、年配の方にはあまり手の負担にならないような課題を選ぶようにしています。(仁藤 歩先生/静岡)
基本的に学習する曲はご本人に選んでいただくのですが、ご自分の実力よりもはるかに難しいものを選んでしまう場合はどのようにしたらよいでしょうか?
- 自分のレベルに合わないものを選ばれたときは、有名な箇所だけ抜粋したり、簡単バージョンにアレンジしたものをお渡ししています。(堀端 美帆先生/愛知)
ポップスを弾きたいというご希望をいただくことがありますが、クラシックと違って音の並びやリズムが難しいので、どのように指導するべきか悩んでいます。
- ポップスは伴奏が難しいので、バスの音以外を省略するなど、弾きやすいようにアレンジしています。(堀端 美帆先先生/愛知)
- まずは左手を和音にして弾きながらメロディーを歌い、できたらビートを増やすなど、伴奏をゴージャスにしていく、という練習方法を勧めています。市販の楽譜を最初から弾くのは難しいので、段階を踏んで仕上げています。(河股 紗耶先生/神奈川)
趣味で習っている生徒さんに、どこまで曲を深く掘り下げて指導をするべきか、悩んでいます。
- 趣味で習っていても掘り下げて勉強したい方もいますし、専門的に学んでいてもあまり踏み込んでほしくないという方もいらっしゃいます。人によって様々なので、生徒さんの表情をよく見たり、本人の意見も聞きつつ、こちらが合わせていくことが大事かなと思います。私は生徒さんに「この曲はもう合格にしますか?」と質問し、仕上がりの基準もご本人に決めてもらっています。(仁藤 歩先生/静岡)
- ある程度弾けるようになった時点で一度合格にし、何年後かにもう一度勉強し直してみることで、一度目より深く学べると思います。(山中 浩代先生/千葉)
大人になって習い始めた生徒さん、発表会にあまり積極的ではありません。どのようなお声がけをしたらよいでしょうか?
- 大人の初心者は、子どもたちと同じステージに立つことに抵抗がある方が多いようです。私は教室でお菓子とお茶を出し、大人の生徒さん同士の交流を目的とした「お茶会」という名目で弾きあい会をしました。人前で弾くことのハードルをできるだけ下げたことで、その後ステージへのお誘いもしやすくなりました。(大塚 千恵子先生/山梨)
- 私の教室ではレッスン室やホールで大人のためのおさらい会を企画しています。終了後にランチ会などの交流の機会を設けることで、大人の生徒さんも楽しく参加できています。(仁藤 歩先生/静岡)
「新しい生活様式」でのレッスンが試行錯誤でスタートしています。小さな気づき、失敗談、試行錯誤を含めた多くの情報・体験談をお寄せいただき、先生方お一人ごとのレッスンをカスタマイズするサポートができればと願っています。「生徒に寄り添って、今できる、私なりの指導」を皆様と一緒に模索していきます。注)各事例を「推奨」するものではありません。また、各記事はその時点の状況です。
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