【インタビュー】浦山瑠衣さんがアメリカのアーティストビザを取得
ボストン在住の浦山瑠衣さん(2013年度特級グランプリ・演奏会員)が、この程、アメリカの『アーティストビザ』を取得されたというニュースが届きました。
アーティストビザは、「科学・教育・芸術・ビジネス・スポーツの分野で国際的に卓越した能力保持者を対象」としたビザで、アーティストはその専門職を活かしながら実際に働いて収入を得ることが必要になり、非常に厳しい審査基準が設けられています。
この度、浦山瑠衣さんに、アーティストビザを取得への道のりについて、お伺いしました。
この度は、アーティストビザ取得おめでとうございます。
アーティストビザが許可されたという嬉しいニュースが届きました。ピティナには推薦状を書いていただき、またそれ以上にグランプリの際にいただいたたくさんの資料に助けられました。最終的に700ページのコンサートやレビュー資料を提出したのですが、PTNA関係が大きな部分を占めておりました。感謝いたします。
アーティストビザとは、どのくらい取得が難しいものなのですか。
詳しい数字は公開されてないのと個人情報保護の関係で、私がお世話になった弁護士さんからも情報が手に入り難かったのですが、2010年には全世界からおおよそ8千人にアーティストビザが降りたそうです。これは、学生ビザの40万人に比べるとかなり少ない数字ですし、政権が変わり規制も厳しくなった中ではさらに年々減っているらしいです。今年の6月現在で50人の日本人に許可が降りたそうですが、アーティストビザというのは科学者や研究医などのケースが多いようです。
申請書類の準備が大変だと伺いました。どのような流れで達成されたのですか?
昨年8月より、過去15年間ほどの全ての資料を年代ごと、国ごとに仕分ける作業からスタートしました。渡米後はいつかアーティストビザに申請したいと考えていたので、実は、小さいものから全てファイリングしておいたのです!
9月には、弁護士の方を選ぶ作業から始めました。たくさんのミーティングに行き、相性のいい方を見つけねばなりません。最初のミーティングには大きなスーツケースにいっぱいの資料を持って行きました。
同時に推薦状を10人のアーティストの方に書いていただく依頼を始めましたが、ピティナの皆様には一番早くに推薦状をいただけて、本当にいつも素早いお仕事に感謝しております。
ビザ取得に際してスポンサーが必要なのですが(多くの場合はエージェントが務める)、私はある特定の会社と契約しないで自由な活動範囲をもっていたかったので、シンシナティで開催された国際コンクールの時にお世話になったホストファミリーの方にお願いしました。民間の合唱団を始め、コミュニティーの中で質の高い音楽活動を広げていらっしゃる素敵なご夫妻です。
そして12月に弁護士の方を決定しました。
2017年に入ってからは、資料の準備にとりかかりました。
全ての過去の資料のスキャンからスタート!同時に英語でないものは全て形式を揃え翻訳する作業をコツコツと。。。これが一番大変でした!膨大な数の日本語資料はともかく、リトアニア語、スペイン語、アルバニア語、イタリア語、ポーランド語、ドイツ語の資料がありましたので、たくさんの人のお力をお借りしました。
今後3年間のプランを提出せねばなりません。今後、実現可能な全ての演奏活動計画案をまとめ、なるべくアメリカでの舞台が多くなるよう、各所に連絡を取りコンサートの契約書を頂けるように動き始めました。
同時に、なにか多文化が共存するアメリカにいる日本人である私にしかできないユニークな活動案も提出したかったので、ぼちぼち煮詰めていた世界の童謡/民謡を聞き込みで集め、ヴィルトゥオーゾなコンサート形式にアレンジし、音楽で文化交流を広める活動を本格的に始めることにしました。
日本の民謡/童謡をベースに、その中に2つか3つの国の音楽を入れるという内容です。
AFM(American Federation of Musicians、米国音楽家連合)より承認状が届く。
ほぼ全ての資料が揃い、各種書類にサインをしていく。
選りすぐりの過去の資料や、これからのアーティストとしての計画案、スポンサーとの契約書等、最終的に計700ページのファイルを提出!
晴れて、ビザが授与される。
準備段階に思いの外時間がかかってしまいましたが、提出から申請まで異例の1ヶ月弱だったので、平均10週間ほど、特に政権が変わって最長で2年ほどかかるかもしれないというデータに比べるととてもスムーズでした。
今後、ここアメリカで、アーティストとして認められ、ビザを気にすることなく活動できることをとてもうれしく思っています。活動の幅もさらに広がります!
今後の活動について
今後は日本での様々なコンサートも企画できたらと考えております。今年の冬には久しぶりに帰国し、故郷での演奏活動も再開します。私の新しいプロジェクトもご紹介したいです。世界の童謡、民謡を集め、日本の民謡童謡をベースに2つ以上の国の民謡を一曲の中に取り入れ、それをコンサート形式に編曲・演奏し、音楽の中での隔たりない異文化交流を目指したものです。
浦山 瑠衣